長岡市東山ファミリーランドにある仮設闘牛場で、
国の重要指定無形文化財でもある、
「山古志の牛の角突き」(震災復興場所)が開催されました。

前日からの雨をものともせず、勇壮な伝統行事は大勢の見物客に見守られ幕を開けました。






「震災で多くの若い牛たちが命を落としたけれど」
山が崩れ、土砂と水に埋まった山古志では、角突き牛の多くが命を落としました。
かろうじて生き残った牛たちも、つぶれた牛舎の中で1ヶ月もの時間、
助けを待っていました。
中越震災当時、ヘリコプターで救出される牛の姿の映像を覚えていらっしゃる方も多いはず。

今回の主役の牛たちは、そんなものすごい試練を乗り越えてきたツワモノばかりです。



山古志の牛の数は減ってしまいましたが、今回は震災復興の記念場ということもあって、
何とかたくさんの牛の姿を見てほしいという願いから、
この日は2歳仔の牛もお披露目出場することになりました。
本当は3歳以上の大人にならないと、牛も角突きには出場できないのだそうです。
来年、山古志の地に戻って開催される場所では、きっと立派な若牛に成長して、見事な闘いぶりをみせてくれることでしょう。
「山間に響く、角の音」
1トン以上になる巨体の牛同士が角でぶつかり合う様は、本当に勇壮です。
東山の山間には、牛たちの角の音が深く響き渡ります。
激しく飛び散る泥、牛の間合いの静けさ、勢子たちの掛け声、
そして一瞬の押しつ戻しつの牛の動き。
土俵上の牛たちの熱さ、激しさ、普段の草を食むおとなしい姿からは
まったく想像できません。
闘牛が始まる前、勢子たちによって、土俵にはお清めのために塩とお酒がまかれます。
牛たちの真剣勝負を目の当たりにすると、この闘牛がその昔、神聖な祭事であったことを
改めて思い知らされます。


「角突きの進行」
今回は、復興場所ということもあって、まず最初に、震災の際、大活躍だった
陸上自衛隊の東部方面音楽隊によるマーチで始まりました。
「双頭の鷲」に始まり、長岡にゆかりの作曲家大野雄一氏の作品でもある
「ルパン三世のテーマ」など8曲が演奏されました。
見物客の手拍子も入って、会場は和やかなムードに包まれました。



マーチの後は、いよいよ前半の取り組みです。
牛もちたちによる手打ちの儀式が行われ、角突きが始まります。

まずは、若い牛たちのお披露目。
今回は、旧山古志村長・現衆議院議員の長島さんの子牛も登場しました。
なかなかアグレッシブな子牛で、長島さんもうれしそうでした。



そして、あの震災に見舞われた山古志で1ヶ月じっと助けを待ち、
無事生き延びた牛たちによる取り組みが始まります。
災害を乗り越えた牛たちの闘いぶりを見ていると、
「よく生き延びた、がんばったね」と涙が出てしまいました。



後半の取り組みからは、いよいよ横綱級の牛たちによる取り組みです。
日本酒を飲んで、気合を入れ、化粧回しをつけた、
見るからに大御所という牛たちの登場です。



16歳という大ベテランの牛による角突きの迫力の物凄いことといったら!
角の響く音、間合いの緊張感、ぶつかり合う激しさ、どれひとつをとっても筆舌に尽くしがたい迫力です。このぶつかり合いだけは、ぜひとも一度はご自身で体験してください。



「来年こそ、ふるさと山古志の地で!」
今年の角突きは、残すところあと2回。
11月3日の長岡場所と6日の小千谷場所が予定されています。
そして、勢子たちは約束します。来年こそ、山古志の地での闘牛を再開させるのだと。
しかも、来年は、全国闘牛サミットの開催も予定されているそうです。
※牛の角突きについての詳細はこちら
強さ、雄雄しさ、そして、復興にかけるこの一途さが、全国から山古志が注目を集め、応援される所以なのでしょう。今私たちに求められていること、それは走り続ける強さなのだと思います。